福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 「こおり」
文  前野紀一
絵  斉藤俊行

この本の絵を描くことが出来ただけでも、絵を続けてきてよかった、と思える程の素晴らしい本です。絵本という体裁をとってはいますが、どんなジャンルやカテゴリーにもおさまりきらないような広がりや深さがあります。大人の方でもお子様でもそれぞれに感じるところがあるでしょう。ぜひ一度、お手にとってご覧下さい。

「宝石のように透明で色のついた氷を作ろうと夢みて、インクを水にとかし凍らせてみると、インクと氷はくっきりわかれて固まってしまいました。これは、水が氷にかわるとき、水のなかにとけていたインクがおしだされた結果です。氷には、水の分子だけで規則正しく手をつなぎ、水の分子以外のものをおしだしてしまう性質があるのです。氷のなんでもおしだすこの頑固な性質は、地球規模の海流の動きにも、大きな原動力をあたえています。南極や北極で海の水が凍るときに、氷がおしだした大量の塩分がきっかけになって、海洋深層流という深海をめぐる巨大な海流がうまれているのです。色氷の話は、海洋深層流が地球を1000年以上かけてめぐる壮大な物語へと広がってゆきます。
雪氷物理学の第一人者前野紀一さんが、みなさんをミクロからマクロへ、氷のサイエンス・ジャーニーへお連れします。」